IT外国人採用時の在留資格変更サポートとは?
~「特定技能」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更し雇用する方法~
日本のIT人材不足が深刻化する中で、外国人のプログラマーやエンジニアを積極的に採用する企業が増えています。しかし実際に採用する際には、「今の在留資格では働けない」「実務経験がない」「高卒で大卒要件を満たしていない」といった理由で、ビザ(在留資格)の壁に直面することも少なくありません。この記事では、「特定技能」などの就労制限のある在留資格を持つ外国人を、どのようにして”技術・人文知識・国際業務”ビザ(以下、技人国ビザ)へ変更し、合法的に雇用できるのか、そのポイントをわかりやすく解説します。
1. はじめに:IT人材不足と外国人採用の現状
多くの中小企業・ベンチャー企業にとって、開発リソースの確保は喫緊の課題です。日本人エンジニアの人材市場が縮小するなか、外国人のIT人材は大きな戦力になります。しかし、採用時に立ちはだかるのが「在留資格」の壁です。「就労可能なビザを持っていない」という理由で採用を見送る企業も少なくありません。こうした中、「特定技能」など制限付きの在留資格を持つ人材を、どうすれば正規のエンジニアとして受け入れられるのか——制度理解が求められます。
2. 技人国ビザとは?IT業界で必要な在留資格の基礎知識
技術・人文知識・国際業務ビザ(通称:技人国ビザ)は、日本国内でITエンジニアやシステム開発者として働くための主要な在留資格です。対象となる業務範囲は以下の通りです:
- 技術分野:ソフトウェア開発、ネットワーク構築、インフラ設計など
- 人文知識分野:経営企画、人事、マーケティングなど
- 国際業務分野:通訳、翻訳、海外営業など
IT系職種の場合、技術分野に該当し、原則として知的労働であることが要件です。審査では「学歴」「実務経験」「職務内容の整合性」が重視され、雇用契約書や職務説明書の記載が重要となります。
3. 特定技能から技人国ビザへ:3つの主要要件とは
「特定技能」ビザ保持者がIT業界で働くには、技人国ビザへの在留資格変更が必要です。そのためには、以下いずれかの条件を満たす必要があります(雇用以外に業務委託で発注を考えている場合も同様です)
- 大学(日本または海外)の学士号を取得していること
- 日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」の称号を得ていること
- IT分野の実務経験が通算10年以上あること(学歴含む)
この3つのいずれにも該当しない場合でも、特例として認められるのが「IT告示」に基づく例外措置です。
4. IT告示による例外措置と対象資格
法務省告示第437号(通称:IT告示)は、情報処理技術者試験等の国家資格を保有している外国人について、学歴や経験の要件を免除して技人国ビザの審査を可能にする制度です。
対象となる資格(抜粋)
- 応用情報技術者試験
- 基本情報技術者試験
- 情報セキュリティマネジメント試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- システムアーキテクト試験
- プロジェクトマネージャ試験
【参考:出入国在留管理庁】https://www.moj.go.jp/isa/policies/bill/nyukan_hourei_h09.html
旧制度の第一種・第二種情報処理技術者試験や、特種情報処理技術者試験なども対象に含まれます。これら資格を保持している場合は、実務経験や大学卒業の要件が免除され、ビザ変更申請の大きな武器となります。
5. 入管申請の実務:雇用主と本人が準備すべき書類
在留資格変更の際には、企業と申請者本人が多くの書類を整備する必要があります。
■ 雇用主側の提出書類
- 雇用契約書(業務内容・勤務条件・給与明記)
- 会社案内、登記簿謄本、決算書
- IT事業の内容を証明する資料(開発実績・Webサイトなど)
- 職務内容説明書(使用言語、開発内容など詳細に)
■ 外国人本人の提出書類
- 履歴書、職務経歴書
- 在留カード、パスポート
- 卒業証明書、資格証明書
- IT国家試験の合格証(該当する場合)
書類の不備や曖昧な記載は不許可のリスクを高めるため、行政書士などの専門家に依頼するのが望ましいです。
6. 採用後の対応:雇用主が果たすべき義務と支援体制
外国人が無事に在留資格を取得した後も、企業側には継続的な法的義務と支援体制の構築が求められます。
■ 法的義務
- 「外国人雇用状況届出書」の提出(雇用・退職時)
- 契約条件の変更時は入管への報告(14日以内)
- 社会保険や雇用保険の適用・加入
■ 社内支援
- 入社時の業務研修、日本語研修の整備
- 定期面談やフォローアップ体制
- 昇給・キャリアパスの可視化
外国人社員が安心して働ける環境を整えることが、企業の定着率や生産性向上に直結します。
まとめ:「雇いたい」を「雇える」に変える第一歩を
特定技能から技人国ビザへの変更は、制度と書類を正しく理解し準備すれば、十分に実現可能です。IT告示を活用することで、学歴や実務経験の制約にとらわれず、優秀な外国人材を迎えることができます。
企業としても、在留資格変更を支援できる体制を整えることで、採用競争力を高めることができます。ぜひ、本記事を参考に、未来のIT人材確保に向けた一歩を踏み出してください。